【中野信治のF1分析/第3戦】反転したレッドブルとメルセデスの勢力関係。よく我慢できた角田裕毅への命題

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, May 5, 2021.

By Auto News on May 5, 2021 at 7:27 AM
  1. Auto News

    Auto News Moderator Staff Member

     いよいよ始まった2021年F1シーズン。ホンダF1の最終年、そして日本のレース界の至宝、角田裕毅のF1デビューシーズン、メルセデス&ルイス・ハミルトンの連覇を止めるのはどのチームなのか……とにかく話題と期待の高い今シーズンのF1を、元F1ドライバーでホンダの若手ドライバー育成を担当する中野信治氏が解説。ドライバー、そしてチーム監督、そしてレース解説者としてのファン視点と、さまざまな角度からF1の魅力をお届けします。第3戦はレッドブルと角田裕毅選手の現状について中野氏が解説します。

      ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

     2021年F1第3戦ポルトガルGPでは予選も決勝も、それぞれコンディション変化が難しいなかでで行われました。予選ではQ3の最後のアタックではメルセデスがミディアムを選択しました。レッドブル・ホンダはソフトタイヤを選択して、両者とも同じようなタイムになったわけですが、その背景は僕もよくわからないですが、メルセデスのクルマにはミディアムのほうが合っていたことはあると思います。

     ミディアムとソフトの逆転現象がどのような理由で起こっているかはチームに聞いてみないとわかりません。今回たまたまなのか、そうではないのか。ですが、メルセデスは昨年もそのようなイメージでしたよね。ポルトガルGPが行われたアルガルベ・サーキットの路面も結構特殊だとは思います。路面のいわゆる舗装の目の凹凸が細かいのか、路面のμがとても低くてスリッピーな印象を受けます。

     そういった低μな路面に、どちらかといえばメルセデスのサスペンションだったりジオメトリーなどがうまく機能していて、レッドブルのマシンに対して若干のアドバンテージがあったようには見えました。

     DAZNの解説でも話したのですが、アルガルベ・サーキットは峠のようにアップダウンが多くて先が見えずらいという難しさがあります。普通にドライビングする分には面白いと思いますが、ただコンディションの変化に対しては、ほかのサーキットと比べても、マシンの変化の反応が結構大きくて、その部分の修正が難しいんだなと感じます。

     今回の一番のポイントになっているなと感じたのは『風』です。アップダウンが非常に大きいサーキットなので、風がマシンのハンドリングに与える影響はかなり大きいように見えました。

     またアルガルベ・サーキットは全開率が高いサーキットですが、単純にストレートが長くて全開率が高いというわけではなく、ほぼ90度に曲がるコーナーも結構ありますし、アクセル全開で抜けていけるようなコーナーもあります。そういったコーナーでアクセルをぎりぎり踏んでいけるか・いけないかの差が大きくなっていきます。

     風の影響とコースの高低差が大きいことで、車高の変化やマシンのピッチング量(前後動)でダウンフォースの変化幅は結構激しくなります。マシンがもともと持っているダウンフォース変化に風の影響が加わると、さらにドライビングが難しくなることは想像に難くないですね。

     そこにもともとの路面μの低さも加わって、ダブルパンチで1周をまとめるのがすごい難しいように思いました。ほかのサーキットとは違う要素がミックスされて、予選のときのような不思議な状況を生み出しているのかなと思います。

     マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)も予選のターン4でハーフスピンをしてしまいました。ターン4は左に登っていくコーナーで登り切ったところではマシンの荷重も抜けるので、リヤが急に軽くなったところでコントロールが乱れたというのは、非常にわかりやすい動きだったと思います。

     予選Q3は2回目の最後のアタックで各車タイム更新ができなかったですが、それは風の影響だと思います。無線でもそのような内容を話していましたけど、やはり風が強くなってきて、たしかホームストレート向かい風になったと思います。ストレートで向かい風になると、ストレートスピードは若干落ちてしまいます。

     その分ダウンフォースが増えるのでターン1は走りやすくなると思いますが、ターン1を抜けるとそれ以降は追い風になるのでダウンフォースが抜けてしまいます。そのあたりの走らせ方、ドライビングの仕方という変化がかなり大きくなるので、ドライバーたちはかなり苦しんだと思います。

     決勝は、結果的に言えばメルセデスが強かったですが、今回は週末を通してメルセデスがちょっとパフォーマンス的に有利なのかなと思いました。予選の時からフェルスタッペンも本当に一発の頑張りでメルセデスにタイムを近づけましたけど、そのタイム出しに行くときのフェルスタッペンのマシンの動きは、すごく頑張って攻めて、常にいっぱいいっぱいの綱渡りみたいな走らせ方でいってるように見えました。

     それに対してメルセデスは結構安定していて、前戦とまったく逆の状況になりましたよね。第2戦のエミリア・ロマーニャGPではメルセデスは結構クルマをコントロールしないと走れないという動きで、フェルスタッペンはスムースに速いタイムで走れていました。ですが、今回のポルトガルGPでは去年の状況に戻ったような、メルセデスは綺麗に走らせることができるクルマになっていました。

     無理して走っているようには感じられないですし、スムーズなドライビングはタイヤにも優しいですし、ミスも当然減ります。予選の時はメルセデスとレッドブルが際どい争いになるだろうなと思ったのですけど、レースでは戦略も含めてメルセデスのほうが有利なのかなというのがなんとなくありましたね。
    .
    2021年F1第3戦ポルトガルGP ポジションを争うルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(メルセデス)

     今回の結果が次戦以降もそのまま続くかと言われると、まだ答えは出しづらいですね。メルセデスのマシンは実際の数値は見ていないので分からないですけど、レーキ角も減らしてきていると思います。クルマの動きを見ていると、そういう動きに見えますので、昨年のクルマの方向性に寄せてきている感じがします。

     ですので、今回の結果がサーキットの特性によるものなのか、それともメルセデスが何かを見つけてきたのかというのは、次戦のスペインGPに行ってみないとわからないというのが正直な感想です。とにかくレッドブル・ホンダはメルセデスに食らいついていってほしいですが、次のスペインを取られてしまうと、なんとなくシーズンの流れがメルセデスに持っていかれてしまう感じがします。

     スペインGPが開催されるカタロニア・サーキットは、前半は空力が大事なコーナーが続き、後半は完全な低速コーナーなので両方の要素が詰まっているサーキットです。速いタイムを出すには特にセクター3が大事になります。昨年のスペインGPでもメルセデスはセクター3で安定して速かったので、そのセクター3のメルセデスとレッドブル・ホンダの区間タイムがどれくらいの差になるのかが注目ですね。そこを見れば、今年のクルマの特性がさらに深く見えてくるのかなという風に思います。

     そして、第3戦の角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)選手についてですが、今回は初めてのサーキットですし、チームメイトのピエール・ガスリーとセクターのベストタイムなどを比較しても、そこまで大きく遅れているところはないですし、走らせ方で間違っている部分もなかったと思いました。

     結果はガスリー10位、角田選手は15位と離れましたが、それは初めてのサーキットのわずかな経験の部分が影響しているなと、データを見て思いました。角田選手はもともとコースを習熟するスピードが速いドライバーですが、今回はアルファタウリのマシンに合っていないサーキットということも少しあり、そのなかでガスリーがすごく頑張った部分があるのかなと思います。

    .

     今回のアルファタウリのマシンはどっちつかずになっていました。どっちつかずと言うと抽象的な表現ですが、アルファタウリの良さを出そうとすると、クルマがどうしてもアンダーステア気味になってしまったり、それを消そうとするとリヤがナーバスになってしまい、その中間のいいところを掴めていませんでした。

     角田選手もグリップ力を感じないとコメントしていましたが、詳しくはわかりませんが、彼がいままでF1マシンを走らせたなかで一番路面μが低かったサーキットだった思います。そういうコースでの経験もなかったので、その部分で戸惑った面もあったのかなと思います。ですので、今回は走らせ方というよりも、引き出しの部分で角田は苦しんでいましたね。

     同じように、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ/予選13番手、決勝8位)もF1でアルガルベ・サーキットを走った経験はないと思いますが、走りの引き出しの多さといいますか、レースでの習熟していくスピードや過程を見ると、やはり経験の差は大きいなと思いました。ダニエル・リカルド(マクラーレン/予選16番手、決勝9位)も決勝での走りは素晴らしかったですね。

     角田はまだ1年目なので、こういった新しいタイプの路面に若干戸惑った感じがありましたが、僕はこれもラーニングカーブのひとつだと思うので、それほど焦る必要もないと思うし、今回は本当に手堅くレースしていたと思います。

     レースの前半ではちょっとトラックリミットの警告を受けたりしていましたが、そういうのも勉強なのかなと思いました。トラックリミットに関しては、前戦のこともあったのでレースの途中で戸惑っていたように見えたのですが、後半ハードタイヤに交換してからは普通にトップ10で戦えるスピードはあったと思います。チームメイトのガスリーはミディアムタイヤでしたが、全然互角に走れるスピードはありました。

     ですので、僕は全体的な評価としては今回の角田選手は全然悪くない結果だと思っています。スタートでの位置取りもオンボード映像が出ていましたが決して悪くなかった。オープニングラップで少しタイヤをロックさせてバイブレーションも出ていたようでペースを上げることができなかったですが、その苦しい状況でも第2戦の反省を活かしてミスをしないように心がけて走っているように見えました。

     クルマをまだ知らないときに自分をアピールしようとプッシュしてしまうと、往々にしてネガティブな方向にいきかねません。角田はまだ3戦目ですし、そこで何かをしようとする気持ちは当然わかりますし、テストでも速さを見せているので自分自身に自信もあるのだと思います。

     今回は前半のタイヤが厳しくなったのでピットストップを早めたことで後半の組み立てが厳しくなったのですが、ブレーキロックなどのドライバーエラーも含めて、ちょっとしたミスは経験として仕方ががないと僕は思うので、そのあとのリカバリーに関してはうまくできていたと思います。角田選手には焦ってほしくないですね。苦しいときでも今回のような走りを積み重ねていくと絶対にタイミングがあったときに結果を出すことができます。

     とにかくいまはディシプリン(自制心)が大事で、とにかく自分自身をうまくコントロールして抑えて確実にいくとこが重要なことだと思います。クルマを速く走らせる能力を持っているだけに、まずは我慢して確実に結果を積み重ねることで、そのうちクルマがピタッと合って、そのいい流れが来たときにガスリーを上回ってみんなを驚かせるような結果を出せる機会が僕は絶対に来ると思います。

     周りの流れを自分に引き寄せるという意味でも『確実にやる』ということが、いまの角田選手の一番の課題であり、宿題でもあり、命題になります。
    .
    毎戦、好結果が期待出来るわけではない。来るべき機会に備え、今の角田裕毅には確実な結果が求められる

      ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  

    >
    中野信治(なかの しんじ)

    1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
    公式HP .
    SNS .

    .

    .
     

Comments

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, May 5, 2021.

Share This Page